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ダブル手帳の障害者読み物

身体障害1級(脳性麻痺)・精神障害3級(発達障害)。文春オンラインなどに執筆しているライターです。多くのヘルパーさんのお陰で、一人暮らしも気付けば10年を超えました。

社会

鳥取県立バリアフリー美術館、ウォーホル、鳥取県立美術館

今週「鳥取県立バリアフリー美術館」と「鳥取県立美術館」のそれぞれの担当課に問い合わせを行った。本稿ではその経緯とご回答、それに対する私の所感を述べたい。 【背景】 2025年開館予定の鳥取県立美術館が『ブリロの箱』をはじめとするウォーホル作品を…

AIによる意思決定支援システムを用いた人生の選択肢の充実

人生において選択肢は重要だ。 乙武氏は「選択肢を増やそう」をモットーに活動を行ってきた。彼は少数者であっても多くの選択肢を持てる社会を理想とする。これに異を唱える人は少なかろう。以前バリバラでCIL西宮の玉木氏が「障害児は将来の選択肢を非常に…

生殖・出生前検査・中絶・出産・養育・虐待の倫理

女性の中絶の権利を認めたロー対ウェイド判決を米連邦最高裁が覆した時、私は驚愕するとともに地獄の釜が開いたと感じた。 先に申し上げておくと、米国で妊娠中の女性は目下悠長な議論どころではない状況だと認識している。立場に関わらず、何よりも優先して…

やまゆり園障害者連続殺傷事件から6年 名前の剥奪と生の否定 匿名の死者を悼むことは可能か

2016年7月26日未明、神奈川県相模原市の障害者入所施設やまゆり園で連続殺傷事件が発生。19人の命が奪われた。 本稿では問題を1点に絞る。施設・家族会・県・警察・検察・地裁・報道機関等のアクターのいずれからも犠牲者の氏名が明かされなかった結果、6年…

障害者と報道機関を巡る問題

【趣旨】 障害者に関する報道を実りあるものにしていくために、障害当事者とマスメディアとの間にどのような課題があるか考察する。 【目下の課題】 ①報道が一過性である(障害者問題に限った話ではないが) 少しでも初報から日にちが開くと、もはや重要な続…

障害者と広告 無料Web媒体から社会問題が消える日

【障害者の日によせて】 障害が社会との関係の中で生ずるものならば、「社会から存在を忘れられる」「主語となる力を奪われる」といった傾向や困難さも障害の一部と言えるでしょう。従って、障害者週間が一定の注目や発言の機会を生むことの意義は大きく率直…

映画『愛について語るときにイケダの語ること』のレビューの補足

映画『愛について語るときにイケダの語ること』のレビューを文春オンラインに書きました。 bunshun.jp 上記記事に書き切れなかった部分を以下に補足させていただきます。主に映画としてのテクニック面の特徴に光を当てています。 一人の人間をいかに丸ごと複…

入力と出力を繋ぐモノ ~自動運転車には車椅子で乗れるのか?~

労働移動のコスト いつの時代にも斜陽産業と成長産業がある。前者は人手が余り、後者は人手不足になる。近代経済学の理論上は、労働市場の働きによって前者から後者へと自然に労働者が移動することになっている。 だが、当然ながら現実はそう単純にはいかな…

歴史に学ぶ難しさ 「ポル・ポトは運が悪かっただけ」にどう反論するか?

摘要 歴史は全て一回性の固有のものであり再現性が無い。それ故に、歴史から引き出した教訓や法則性を現代や未来の社会像についての議論に敷衍する際、我々はその射程の限界にもっと自覚的かつ慎重であるべきだ。「歴史に学ぶ」というのは決して簡単なことで…

「モテないということが問題の本質じゃない」への批判

西井開氏の紹介 私は、「ぼくらの非モテ研究会(以下、『非モテ研』)」を主宰しておられる西井開さん(西井 開 (@kaikaidev) | Twitter)と仲良くさせて頂いている。非モテ研に何回かお邪魔したり、お茶をしたりした。本記事は彼の主張の一部を批判する趣旨…

ダブル手帳 × ホリィ・セン × 西井開 対談内容全文

トークテーマ「神×サークラ×非モテ 当事者研究はどこへゆく」 11月24日(日)10:00~11:30 於:京都大学文学部新棟第1演習室 D:ダブル手帳(神様同好会) N:西井開(ぼくらの非モテ研究会) H:ホリィ・セン(サークルクラッシュ同好会) Y…

姉について語るときに私の語ること

私の姉は、どちらかというと内向的で、読書ばかりしている目立たない人でした。でも頭の中では色々面白いことを考えていて、自分の世界を持っている人でした。 姉には小説を書く傑出した才能がありました。私は姉の小説を読むのが大好きでした。姉は、恋愛や…

神様をやめて人間に戻ります

今はまだきちんとした理由を説明できる精神状態になく、申し訳ございませんが必要事項だけ箇条書きでお伝えさせていただきます。 神様同好会について12月22日の福岡開催を最後に、無期限休止状態に入ります。もちろん、既に告知済みのイベント(NF、12/7…

物語の中で「異性愛」を描くことの困難さについて

非常にセンシティブなことについて記述することになろうかと思うので、鍵括弧や留保が非常に多くなりますがご容赦ください。 まず、そもそも多様な人間の在り様を「同性愛」「異性愛」という二分法で分けること自体に色々な異議があって当然だと思います。た…

アホ松ツイート

最近、下記のツイートが異常に伸びた。 宗教者やスピ系の人に「あなたが障害者なのは前世で犯した罪の報いを受けているためで、因果応報」という旨の事を言われた経験が少なからずある。この言葉は攻撃性が高い割に反証不可能で、しかも信教の自由という盾が…

神様同好会第三回で面白かった内容

10/21(月)の神様同好会第三回は面白い内容が多かった。その中に一つの共通点のようなものはまだ見つけられていないが、下記に箇条書きで書き留めておく。なお、参加者の語りの内容は「」内に表現し、「」に入っていない部分は私の個人的な所感である。 「…

介護現場から見る日本経済 ―ブラック労働・新宗教・スピリチュアリズム・自己啓発―

【摘要】 我々が生きる資本主義社会を駆動する思想は、ウェーバーが喝破したように、プロテスタンティズムであると長らく考えられてきた。しかし、筆者は介護ヘルパーとの交流を通じて、一般的に「ばっちいもの」「傍流」と見なされがちな、新宗教・スピリチ…

文春オンラインに24時間テレビや感動ポルノについての記事を執筆しました

文春オンライン様に記事を書かせていただきました(二回目) bunshun.jp このブログと若干重複する内容も含まれますが、大幅に加筆修正して新しく発展した形にできたと思います。ですので、いつも支えて下さっている読者の皆様にも是非ご覧いただきたいです…

文春オンラインに執筆した記事とその補足

文春オンライン様に記事を書かせていただきました。 bunshun.jp 執筆依頼を下さった文春オンライン様はもちろんのこと、こんな未熟者をライターとしてのオファーが来るまでに育てて下さったこのブログの読者の方々には感謝しかありません。今回のことは皆様…

人狼に勝って生き方で負けた話

2月22日(金)、サークルクラッシュ同好会の例会で人狼*1をした。そこで得られた知見について述べたい。 人狼に抱いていたイメージ 人狼は私にとって鬼門とも言える因縁のゲームである。というのも、私が大学の時に属していたゲームサークルに居辛くなった直…

恩義は債権のように他者に譲渡できるのか

以前このブログで取り上げたA先生*1にまだ何も恩返しができていなかったなと思い立ち、ささやかながら贈り物をした。それをきっかけにして二言三言、言葉を交わした。 しばらくして、A先生から住所と電話番号を教えてくれというLINEが来た。良いですけど何に…

ヤンキーの研究

「ヤンキー」と呼ばれる人達が何を考えているのか、すごく興味はありつつもよく分からなかった。ヘルパーさんの中には元ヤンの人が多いので色々と学生時代のことを聞いてみたりもしたが、現役ではないのでやはりよく分からない。そういう意味では下記の本は…

政治諷刺画が持つダサさの普遍性について

皆さんは、新聞の隅っこに載っている、政治家の顔を極度に誇張した諷刺画を見て、何となく不快な気持ちになった経験はないだろうか。私はあの手の表現がとても苦手で、端的に言ってダサいと思う。別に政治やそれにまつわる表現が嫌いなわけでもないし、諷刺…

700円のクリスマスケーキ

「うちは寺だからクリスマスは無い。サンタも来ないよ。」と言われて育った。 そのためだろうか、クリスマスというものを自分の中にうまく位置づけられないまま、気付けば大人になっていた。周りを見渡すと、多くの人々にとってクリスマスというのは一大事で…

障害者から見た「感動ポルノ」について

本稿では、障害者を「感動ポルノ」として消費することへの批判、及びそれに対する反論について検討したい。 「感動ポルノ」とは何か まずはじめに、「感動ポルノ」とは何だろうか。現在ではその定義も拡散しているが、本稿ではこの言葉が人口に膾炙するきっ…

影の主役としての「一見さん」 ーサークラをサークラたらしめるものー

12/13(木)に京都大学サークルクラッシュ同好会(以下サークラ)の定例会に初めて参加した。その感想について二回に分けて記す。前編となる本記事では、例会の居心地の良い雰囲気がいかにして生み出されているかについて考察する。 絶妙な居心地の良さ まず…

うおおおおおおおおおおおおおおおおおお

障害福祉サービスの世界には、相談員(介護保険制度におけるケアマネに相当)という人達がいます。先週、相談員の度重なる傍若無人な振る舞いについに堪忍袋の緒が切れ、契約の解除を申し入れました。どのようにやばかったかということを具体的に列挙しても…

場の乱雑度が一定程度以上になると逆に大丈夫になる話

私は発達障害の中でもかなりアスペルガー傾向が強い方だと思う。また、身体障害が重いため自由に動き回ることが難しい。なので、とにかく乱雑な場を嫌い、整然とした秩序のある場を好んできた。ところが、場の乱雑さが度を超えると逆に居心地が良くなってく…

実名はまだ要らない

前記事でインターネットを介したオフ会のような集まりをホッピングして回っていることを述べた。そこで不思議に思ったのが、同じインターネットのオフ会のような集まりと一口に言っても、ハンドルネーム文化圏の所と実名文化圏の所があるということである。 …

障害者から見たヘルパーさんと介護業界

障害者の生活とヘルパーさんは切っても切れない関係にある。私はかれこれ数年間、毎日3時間以上ヘルパーさんのお世話になってきた。そこで本記事では、介護を受ける障害者から見たヘルパー、居宅介護事業所、居宅介護業界について書いていきたい。 なお、本…