Mastodon

ダブル手帳の障害者読み物

身体障害1級(脳性麻痺)・精神障害3級(発達障害)。文春オンラインなどに執筆しているライターです。多くのヘルパーさんのお陰で、一人暮らしも気付けば10年を超えました。

文春オンラインに執筆した記事とその補足

 文春オンライン様に記事を書かせていただきました。

bunshun.jp

 執筆依頼を下さった文春オンライン様はもちろんのこと、こんな未熟者をライターとしてのオファーが来るまでに育てて下さったこのブログの読者の方々には感謝しかありません。今回のことは皆様のおかげです。本当にありがとうございます。

 

 以下、紙幅の都合で記事に書ききれなかった点を若干補足させて頂きたいと思います。今回の参院選で重度障害者の方が議席を得たことにより、以下の二点のような波及効果も考えられると思います。

 

 第一に、合理的配慮の解釈の範囲が拡大されることです。彼らには国会内で前例のない様々なサポートが必要になります。彼らがそれらを要求した時、それがいかにコストがかかるものであったとしても、議員としての活動を成り立たせるために必要であれば受け入れざるを得ません。彼らの議席数がいかに少なくとも、正論を正面切って否定することは絶対にできないからです。かくして彼らが主張する国会のバリアフリー化は殆どの部分で実現すると考えられます。そしてそれはそのまま、「国権の最高機関」で行われた「合理的配慮の前例」となります。すると、今後公的機関が合理的配慮を提供する際、国会で行われた対応を基準として参照するようになります。私も役人なので分かりますが、役所は前例に右へ倣えするスピードだけは非常に速いものです。それは民間にも波及します。こうして実質的に運用面で合理的配慮の範囲が拡大する結果になります。これを正攻法で実現するには気が遠くなるような時間と労力が必要だったでしょう。攻略対象を国会のバリアフリー化という一点に絞ったのは慧眼としか言いようがありません。

 第二に、今後障害者運動の間で、恒常的に当事者を国会に送り込もうという動きが活発化する可能性があります。現在の障害者運動は、党派や障害種別ごとに分断されており、結束して障害者代表を送り込むということができていません。そのため、障害者政策の形成過程においても、基本的に国会の外から圧力をかけるという方法しか取れませんでした。しかしこの方法にはやはり限界があります。今回のできごとをきっかけに、国会の中からも政策に関与していこうという流れが加速する可能性があります。それは障害を持つ有権者の多さを考えれば十分に現実的な戦略でしょう。