オリジナル
「自分の人生の主人公って自分なんすかね?」 イチロウは唐突にそう言った。トウマもこの程度はよくある事だ、という調子で答える。 「うーん、どうなんでしょうかねえ」 ほぼ情報量のない応答である。彼は洗濯物を畳む手を止めずにイチロウの相手をする。優…
『A地点から』 西王地真 千日前通りを進むと〈笑いの館〉の看板が見える。少なくとも、館が大改装されて以降では初めての訪問だ。 今や無機質なIDスキャナしかない入口へ進む。「マイド!」という人工音声と共にドアが開いた。棺桶を思わせる真っ黒な空間だ…