ダブル手帳の障害者読み物

身体障害1級(脳性麻痺)・精神障害3級(発達障害)です。

アニメを公共事業にすべき理由 ―公共財としてのアニメ―

 ここ十数年、アニメは文化のメインストリームにいる。にも関わらず、アニメ業界が儲かっているという話を聞いたことがない。私の考える理由はシンプルである。つまり、アニメは公共財であるにも関わらず、そのように認識されていないからである。

 まず、公共財の定義を確認しておきたい。

公共財 - Wikipedia

 ここから引用すると、公共財とは、「 非競合性あるいは非排除性の少なくとも一方を有する財として定義される」。「競合性とは、消費者(利用者)たちによるその財の消費が増えるにつれ、追加的な費用なしでは、次第に財の便益(質・量など)が保たれない性質を指す」。「排除性とは、対価を支払わず財を消費しようとする行為を実際に排除可能な性質を指す。この場合市場では、価格付けされた財が対価の支払いを条件として販売される」。非競合性、非排除性というのは競合性、排除性を満たさない状態である。公共財については市場原理がうまく働かない。そこで、アニメがこの非競合性、非排除性の2つの特徴を備えているか見ていきたい。

 まず第一に非競合性だが、アニメは言うまでもなくこれを満たしている。何万人もの人が同時に同じアニメを見ることができる。何回消費しても数が減ったり劣化したりすることはない。この点、食べ物や衣服などとは明らかに性質が異なる。

 第二に非排除性だが、アニメは実質的にこれを満たしていると考える。もちろん、ブルーレイやDVDを買うという「対価」を支払った者のみにアニメを届けられれば良いのだが、実際にはそうはいかない。まず、テレビ放映の段階では消費者に対価を支払わせることはできない。テレビ放映時に全部録画しておけばブルーレイなど買わなくてよいという人は相当数いるだろう。加えて、ネット上を探せばいくらでも違法アップロードされたアニメを見つけることができる。もちろん権利者側も対策はするが、アニメは複製可能なので、いたちごっこで焼け石に水である。ネット上の全ての違法アップロードやファイル共有を取り締まるなど現実的に不可能だ。上記の理由から、アニメは事実上の非排除性を持つと言える。

 以上の議論から、アニメは非競合性、非排除性を併せ持つ公共財であることが分かった。公共財であるということは、フリーライダーを排除できないということである。我々はその気になれば制作者に1円も支払わないで膨大なアニメを消費することができる。その結果として、消費された価値より遥かに少ない金額しか制作側に支払われないことになる。従って、多くの場合アニメという映像コンテンツだけで採算を取ることは諦め、いかに公共財の性格を持たない商品で儲けるかに採算を賭けることになる。たとえば、ブルーレイに大量の特典を付けたり、グッズを売ったり、声優のライブを行ったりする。これらが競合性、排除性を持つ財であることを考えれば、そこで利益を上げようとするのは自然な流れである。しかし、採算分野がアニメ映像本体から離れた領域になればなるほど、アニメ制作会社に入る利益は少なくなる。そもそも、アニメ映像本体を作るのにも膨大な費用がかかっているのである。いきなり映像制作で損をするところから始まって、運が良ければ周辺事業からのおこぼれで少しだけ回収できるというようなビジネスモデルで本当に良いのだろうか。アニメ映像制作自体に正当な対価が支払われるのが本来のあり方ではないのか。

解決策

①サブスクリプション(定額制)サービス

 最近はNETFLIX、dアニメストアなど、定額見放題サービスが盛んになってきた。こうしたサービスを作った人達はアニメの公共財的性格をよく理解していると言える。実際、いちいちテレビを録画したり違法アップロード動画を探すコストよりも会員料の方が安いと考える人はこのようなサービスを使うだろう。しかし、「会員料すら払うのも惜しい。何故その気になればタダで見られるものにお金を払わないといけないのか?」と考える人も大量にいると思う。そういう人に対価を支払わせる方法は今のところ無い。そこでより急進的な②の提案が出てくる。

②国民から税金を取る代わりにアニメを公共事業とし、全て見放題とする。

 まず、一定の金額を国民から税金として徴収する。その上で、全てのアニメを無料で見ることができる国営サイトを設置し、制作されたアニメ動画はここに登録してもらうようにする。ここで注意して欲しいのだが、アニメの制作は従来通りアニメ会社の発意によるのであって、国から委託を受けて制作するということではない。制作側に支払われるのは、税金総額×(その動画の再生数÷サイト上の全動画の再生数)となる。この仕組みはサブスクリプションサービスに近いだろう。その原資を会員料から税金というより強制力のあるものに置き換えただけである。

 とはいえ、アニメだけのために国民の税金を使うことには理解が得られないかもしれない。単に私が好きだからアニメを題材に議論してきたが、実は上記でしてきた公共財の議論というのは、複製可能なデジタルデータ(音楽、映画、漫画など)なら何でも当てはまるのだ。従って、税目は「メディア芸術税」というような包括的なものにして、音楽、映画、漫画などにも全て上記のスキームを適用してしまえば良いのである。

課題

①作品内容への国家の介入

 「こんな反社会的作品に税金を投入するのはおかしい」といった理由で、表現規制が進む可能性がある。一番望ましいのは、税金という形ではなく、NHKのような、ある程度国から独立していて、かつ一定の強制的徴収力を持った機関がお金を徴収し、サイトを運営することである。例えば、NHKの徴収金額を引き上げ、その増額分で新たな法人を設置し、その法人が運営を担うといった仕組みが望ましい。

②海外からのアクセスへの対応

 国民からはお金を徴収できても、海外の視聴者からはお金を徴収することができない。つまり海外のアニメファンはフリーライダーになってしまう。上記の公共アニメサイトについては海外からのアクセスを全てブロックするという方法もあるが、他のサイトにアップロードされてしまえばどうにもならない。

 そうであるならば、いっそ日本のソフトパワーを高めるための戦略としてタダで海外の人にアニメを見せてあげてもよい、という考え方もある。現在政府はクールジャパンと称して莫大な税金を投入したPR活動を行い、海外に日本のコンテンツを普及させようと躍起になっている。これはお金を稼ぐためというよりは国際社会における日本のプレゼンスを高めるためだろう。そう考えると、海外のファンにタダでアニメを公開するだけで日本の評判が良くなるなら、極めてコストパフォーマンスの良い施策と言えるかもしれない。