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ダブル手帳の障害者読み物

身体障害1級(脳性麻痺)・精神障害3級(発達障害)。文春オンラインなどに執筆しているライターです。多くのヘルパーさんのお陰で、一人暮らしも気付けば10年を超えました。

障害者が簡単に作文コンクールに入賞する方法

 私は作文や読書感想文のコンクールで県最優秀賞を三回取ったことがある。ただ、何か中身のあることを書いたわけではない。今読み返してみても寒気がするほど薄っぺらい内容だ。裏を返せば内容が薄くともポイントさえ押さえれば、この種のコンクールにおいて障害者は圧倒的に有利なのだ。以下にポイントを解説する。

①「自らの成長」を必ず盛り込む

 障害者に限らず、この手のコンクールで好まれるのは「体験なり読書なりを通じて成長させられた(大事なことに気付かされた)」というストーリーである。もっと言えばこの基本構造を抑えない限り評価されないと言っても過言ではない。例えば大学のレポートなどでは「あなたの体験はどうでもいいから対象についての客観的かつ論理的な考察を書け」と指導されると思うが、こと作文コンクールにおいては真逆である。どれだけ客観的で優れた論評を書こうとも、それは「学生らしくない(可愛げがない)」と見なされるだけである。いかに自分の体験に結び付け、成長という物語をでっち上げるかが鍵になる。

②障害者であることに言及する

 ①で述べたように自分の体験と結びつけることが必須である以上、その体験の目新しさが作文の評価に直結することになる。ここで障害者であることが効いてくる。障害者は応募数自体が少ないから、それだけで審査員の目を引くことができる。加えて、健常者では書けないような体験をいくらでも引っ張ってくることができる。これは大きなアドバンテージである。

③障害を文章の「主題」にはしない。あくまでさりげなく触れる。

 注意したいのは、障害を文章の「主題」にしてはいけないことである。主張が強いのは嫌われる。例えば、「この障害者を差別する社会を当事者運動によって変えていきたい」というような内容は生意気だと見なされて評価されないだろう。

 大事なのは、あくまで①の作文の基本構造を守ったうえで、その構造を補強する形でさりげなく障害のことを持ち出すこと。「障害がある私にとって〇〇というテーマは他人事ではない。というのも、以前××(障害に絡めたエピソード)ということがあったからである。しかしこの体験(本)を通じて、□□の大切さに気付くことができた。」という具合である。あくまで「たまたま主題に沿っていたから障害のことを出したんですよ」という体で行かなければならない。

 この「主題」というのはどれだけ陳腐で浅い内容でも構わない。「コツコツ努力することは素晴らしいことだ」とか「人を信じる心が大事だ」というようなレベルで十分である。とにかく学校の先生が喜びそうな意見なら何でも良い。

まとめ

 以上を守れば、かなりの確率で良いところまで行けると思われる。文章力に自信がないという人も全く問題ない。国語の先生に徹底的に添削してもらえばいいのである。国語の先生というのはいわば作文を読むプロであるから、審査員の心をくすぐる方法もたくさん知っていることだろう。

 大事なのは、決して中身のあることを書こうなどと思わぬことである。「作文コンクールとは一つのゲームである」と捉え、ハイスコアを目指して存分に楽しんで欲しい。